結局、福祉施設にとっては、身体的な不自由がさほどない知的障害者を受け入れても、ただ厄介なだけで、施設運営上のメリットは何もないということになる。 支援策も動き出したが…… さい銭箱から150円を盗むのは、確かに犯罪行為だ。とはいえ、軽微な罪を犯した知的障害者を、福祉ではなく、いちいち刑事司法のルートに乗せて刑務所に送り込むことが、税金の使われ方として本当に適切だろうか。なにせ受刑者一人を収容するのに、年間300万円ものコストがかかるのだ。 そうした思いから私は、2006年、厚生労働省と法務省に働きかけ、「虞犯・触法等の障害者の域生活支援に関する研究」(07年より「罪を犯した障がい者の地域生活支援に関する研究」に改称)という研究班を立ち上げた。そして、その研究班の提言によって、09年から、累犯障害者への支援は大きく動き出すことになる。 たとえば、全国の刑務所にソーシャルワーカーを配置し、また