50年以上前の作品なのに、現代への先見性とアイロニーが凄すぎる作品。現在の状況への萌芽が、半世紀前に既にあったのだろうか。 主人公の職業は昇火士であり、書物を焼くことを仕事としている。本を所持していると通報があればその家に赴き、火炎放射器で家ごと焼き払うのだ。住人が抵抗すれば、本人すら焼き殺すことも。 風変りな少女との出会いがきっかけで、主人公は自分の仕事に疑問を抱き始める。妻との乾いた関係にも・・。たまたま入手した本を自宅に隠し持った頃から、彼は今まで通りの心持ちでは働けなくなる。ほどなくして上司や同僚に疑念を持たれ、ある事件をきっかけに追われる身となる。逃亡の果てに、彼が遭遇した人物たちとは―。 こんなあらすじです。主人公の心情の変化や逃亡劇も目を引きますが、時代背景の先取り感が何より秀逸。主人公の妻は、リビングのスクリーンに写った友人達と、終始おしゃべりをしていて、夜は睡眠薬に頼り切