日本では2011年の東日本大震災以降から、ダークツーリズムという考え方が、聞かれるようになったと思う。本書はダークツーリズムの研究者である著者が、当概念について手ほどくと共に、自身が各地を巡って、その地の記憶や遺構をダークツーリズムの見方から案内する紀行文の形を取る。 東日本大震災などの災害の爪痕については、当事者達の忘れたいという気持ちと、記憶を継承して忘れまいという気持ちがせめぎ合う。筆者は極力、現状を保存していくことを推奨している。それは事実として、実際のモノが失われると、文書などで残っていても風化して、忘れ去られている現実を目の当たりにしたからだという。 北海道の稚内では、1945年の終戦間際にソ連が侵攻してきて、その地の電信所にいた女性職員たちが陥落寸前まで電信を送り続け、「これで最後です、さようなら、さようなら」の電信を最後に、全員が服毒して自決したとの記録があるという。内容だ