時代意識は自意識より大き過ぎもしなければ小さすぎもしないとは明瞭な事である。(小林秀雄『様々なる意匠』1929年) 小林秀雄の批評は、「ロマン派のディレンマ」を全面的に示している。彼にとっては「時代意識は自意識より大き過ぎもしなければ小さ過ぎもしない」(「様々なる意匠」)。いいかえれば、われわれが「現実」とよぶものは、すでに内的な風景にほかならないのであり、結局は「自意識」なのである。(柄谷行人「風景の発見」初出『季刊芸術』1978年夏号『日本近代文学の起源』1980年) 窓の問題は『人間の条件』を生んだ。部屋の内側から見える窓の前に、私は絵を置いた。その絵は、絵が覆っている風景の部分を正確に表象している。したがって絵のなかの樹木は、その背後、部屋の外側にある樹木を隠している。それは、見る者にとって、絵の内部にある部屋の内側であると同時に、現実の風景のなかの外側である。 これが、我々が世界