【2008年をふり返って:サブプライムローン問題に起因する金融危機に関する雑感】 2008年は,マクロ経済学や金融論を専門とする経済学徒にとって試練の年だったと思う。11月19日に一橋大学の兼松講堂で行われた金融危機に関する公開討論の後に,「日本経済が深刻な事態に至ったことについて経済学者として責任はないのか」と問う声に向き合わなければならなかった。 あまり広く知られていないのかもしれないが,市場機能を重視する伝統的な経済学者(新古典派経済学者)の間でも,2002年以降の日本経済の景気回復に対して違和感を感じていたものは決して少なくなかった。私自身も,2006年12月に上梓した『成長信仰の桎梏』(勁草書房)では,「『上げ潮政策』と呼ばれていた政府の成長戦略や1990年代半ば以降から継続していた日本銀行の超低金利政策がかならずしも日本国民を豊かにせず,投機資金の温床となって,あげくにはバブル