あのときの中村俊輔は、どこか寂しげだった。 12月29日、大阪・長居スタジアムで行われた天皇杯準決勝。鹿島アントラーズに敗れるとキャプテンは、ピッチに座りこんだ齋藤学を引き上げて背中をポンと叩いた。そしてチームメイトを引き連れてサポーター席へと向かい、一列に並んで頭を下げた。 「シュンスケー!」 その声に反応するように彼はサポーター席を眺めて拍手をしてから、クルリと背を向けた。もう一度手を挙げて声援に応じる。足元を見つめながら前へと進んでいく。その姿は、迷いを断ち切ろうとしているようにも感じられた。 彼にとってマリノス最後の試合になるかもしれない。その思いもあって、筆者はマリノス側の観客席から試合を見ることにした。ファン、サポーターにとってどれほどの存在なのかを、あらためて肌で知っておくために。 残留を望むサポーターたちの願いは、彼に対する思いは、痛いほど伝わってきた。背番号10の胸にも突
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