はじめに スイスの中央銀行(SNB)がEUR/CHFのペッグ政策を突然停止したことに伴い、昨日来、国際金融市場がやや動揺しているが、SNBの政策をしばしば取上げてきた本コラムでは、今回の政策判断をいくつか異なる角度から検討したい。その際は、SNBによるマイナス金利の導入に関する本コラム(2014年12月22日付)も適宜ご参照されたい。 背景について 政策変更の背景を考える上では、第一に、昨年12月18日のマイナス金利導入(ただし表明のみ)が所期の効果を挙げ得なかった点に注目すべきである。つまり、EUR/CHFは防衛線であった1.2000から1.2040へ僅かに減価したが、その水準も維持できず、年初以降は1.2000近辺で推移してきた。 第二に、SNBのバランスシートを巡る懸念にも留意する必要がある。前回のコラムで触れたように、議会は、為替ペッグのための「無制限介入」の結果としてSNBが抱え