いつも機嫌よくニコニコと、誰にでもやさしく、不平不満を言わず、穏やかな日々を送ることが、豊かな人生なのだと、そういう「ことば」を信じていた時期があった。 綺麗にラッピングされた平和な世界に憧れて、何度も何度もその「ことば」を読み、救われたような気持ちになって、私もそんな風に毎日を送りたいと努力していた時期があった。 「ここもガイジンばっかりで怖いねぇ」と外国人の前で叫んだババア、「やっぱりイスラム教徒は怖い」と知ったかぶりをした無知なおっさん、「黒人が少なくていい」と言うことの何が差別になるのかわかっていない知り合い、「女性は男性より数学的知能が劣っている」ことを科学的事実だと信じている同僚。 私は黙ってやり過ごそうとした。面倒なことにしたくなくて、なかったことにしたくて、ヘラヘラ笑ってごまかしたりした。それでいつも帰って一人になって、怒りがおさまらない。あれは絶対におかしかった、どうして