打って当然という重圧を、イチローは力に変えてきた。「ぼくはナンバーワンになりたい人。この世界で生きているからには、オンリーワンでいいなんて甘いこと言うやつが大嫌い」 超一流であることを証明するために、「年間200安打」を毎年の目標に設定した。年間162試合を戦う大リーグとはいえ、200本をクリアできる打者はわずか。一昨年は8人、昨年は3人だけだった。現役選手でイチローの9年連続に次ぐのは、マイケル・ヤング(レンジャーズ)の5年連続(03〜07年)。ケガなく1年間グラウンドに立ち、結果を出し続けなければ不可能な数字である。 この9年間、試行錯誤はあった。200安打到達がシーズン終盤までもつれた03年は、重圧で吐き気と息苦しさを覚えたという。06年の達成時は「感情を抑えることで弱い自分を支えてきた」と吐露した。イチローは常々語る。「失敗を重ねないと(安打は)生まれない。それが打撃。それで、