実は、北朝鮮のスキー場にそれほど期待はしていなかった。だが、平壌市内と周辺のパッケージツアーの一環として、記者は他の3人の参加者と行ってみることになった。 直前には、オーストラリア人観光客が、キリスト教厳禁のこの国でキリスト教関係のパンフレットを配っていたとして拘束されていた。また記者のツアーの1人も、滞在期間を延ばすためビザを改ざんしたといわれのない疑いをかけられた。 記者自身は観光ビザで入国していた。最近、社会や政治関連の調査報道より旅行記事を書くことが多いので、問題ないと北朝鮮の旅行業者に言われていたからだ。それでも、口を慎み、銅像の前で頭を下げ、指導者たちがいかに国民を愛していたかという話を感心した顔で聞かなければならなかった。この後間もなく21万2千語に及ぶ国連の人権報告書が発表され、その「愛」がいかに暴力的なものになりうるかが細部にわたって描き出された。 それで今度は、すべてを