第四部を読んでいてもたってもいられなくなったので、この類まれな傑作三国志小説について、簡単なシリーズ総評を書いておく。シリーズは現在まだ続く。第一部、第二部は文庫化済みであり、第三部はまだ。第四部は今日出た。 酒見賢一が獲得した新しい語りの魅力 生まれて初めて三国志を吉川英治版で読んだ時、僕は小学生だった。あの時のことは今でも思い出せる。次々と劉備のもとに集まってくる英雄豪傑、張飛、関羽そして何より孔明が。周瑜がいて、孫権がいて、曹操がいた。誰一人取り上げても面白エピソードの連続であり、果敢に敵と戦う様と、酒盛りする様、そして何より終盤にいたってどんどんかつての英雄豪傑が死んでいくさまをみて、寂しさと物語がつまらなくなっていく郷愁をおぼえたものだ。張飛なんて部下に寝首をかかれてしんでしまうのだが、なにぶん小学生のことだから「あーーーーーここからがいいところだったのになんでこんなところで首を