2015年3月31日 それは本当に物盗られ妄想ですか……? ある日、一人暮らしの高齢女性が、離れた所に住む息子さんに連れられてやって来た。問診票には「妄想を言う」と書いてある。 息子さんによると、最近になって電話で「小屋の中のものを盗まれる」などと言うようになったそうだ。泥棒する奴なんかいないと何度言い聞かせても、本人は頑なに「盗まれた」と繰り返した。それでついに、これは精神科に連れて行った方が良いということになった。 診察室で実際に女性の話を聞いてみると、なんだか妄想っぽさがない。この感覚の説明は難しいが、敢えて言えば「都合の良い決めつけ」がない。例えば、「いつ盗られたことに気づいたのか」という質問にはきちんと答えられるのに、「犯人の目星はあるか」という問いには「さっぱり分からない」と言う。物盗られ妄想の人だと、これが逆になる印象がある。「現場を見たわけじゃないが、盗んだのはアイツだ