「エスノグラフィー」が、マーケティングや組織改革の場で注目されている。直訳すると「民族誌学」で、もともとは人類学において、「未開」の民族の文化や行動様式を理解するために用いられてきた手法だ。 これまでのマーケティング調査は、はじめに何らかの仮説を立て、それを検証していくことが一般的だった。ビジネスで使われるエスノグラフィーは、むしろ仮説を発見するためのアプローチと言える。現場に入り込んで、先入観を持たずに観察やインタビューなどを行い、そこで収集したありのままの情報の中から、新たな仮説を見いだしていくことに最大の特徴がある。 エスノグラフィーが注目される背景には、仮説起点によるマーケティングや組織改革の行き詰まりがある。消費者の嗜好が多様化し、商品・サービスの差別化が困難になる中、「消費者はこういうものを欲しているはずだ」と仮説を立てるこれまでの思考プロセスでは、なかなかイノベーションを