中村潤のエッセイ「さまざまいま」第2回 「糸 → 糸のはし → 糸くず → 糸くずのはしっこ」 『糸糸の法則』というシリーズの作品がある。糸を指で絡めてかたまりにしたものに、糸を通した針を裏から表から刺す、刺す、を繰り返して板状に形作る。糸が針で扱えない長さになったら、残りをハサミで切る。手元には、作品となった形と、切り落とした糸の端が残る。素材として使っている糸は刺繍糸で、元々細い糸6本がより合わせられて1本になっている。針を抜き刺しする作業をへて刺繍糸にかかっていた『より』は緩み、切り落とした糸の端は6本にバラけた。6分の1本の細い糸を指でつまんでみる。しなやかで、思っているより張りがある。「ちょっと取っとこ!」と箱にしまう。『糸のはし』という材料ができた。 ある日『糸のはし』を洗濯してみた。溜まった『糸のはし』を洗濯ネットに詰めて洗濯機にポンと放り込む。洗い上がりのお知らせ音に呼ばれ