対談 正岡子規、躍動する運動神経 ──「別に一体」に向けて 岡井隆 平出隆 (注:この稿は『正岡子規──俳句・短歌革新の日本近代』(「KAWADE 道の手帖」、2010年)のために行なわれた対談の文字起し稿(平出隆所蔵のWordファイル)から再現されたもので、最終掲載稿とのあいだに若干の異同がある。対談は2010年8月11日。) 左利きの強打者? 岡井 大体不思議なんですよね、平出さんがなぜ正岡子規か。伊良子清白なんかとつながっているんですか、平出さんの中では。 平出 最初は野球なんですよ(笑)。 岡井 あ、野球ね、そうか。 平出 『ベースボールの詩学』という本を一九八九年に出したんですが、そのときにアメリカにおける野球はアメリカに起源があるとは神話に過ぎない、という問題を中心にしました。ちょうど百年前に、つまり一八八八年から八九年にかけて、スポルディングが野球を興行しながら世界一周をする