連休はどうだったと尋ねると泣かしたと彼女はこたえた。祝日の午さがりのレストランのテラスで母親と妹を泣かした。それはまた。私は意味のないせりふで時間を稼いで考える。なんでまたそんな派手なことに。彼女は眉を上げる。べつに泣かそうと思ったんじゃない。ひどいことは言ってない。当たり前のことだけ。 派手なことだなあと私は思う。南方ふうにくっきり整った顔だちの姉妹とその母の優雅な昼食および修羅場。目の前の彼女はまぶたを伏せ、そうすると目の下に濃い影が生じる。私のとおんなじ睫とはちょっと思われない。きれいで賢くてたいていのことは黙って済ませてあとから簡潔に報告する女のひと。今日みたいに不穏な話をはじめるのは珍しかった。 彼女の妹が上京し彼女と一緒に住みはじめて一年になる。彼女は大学からずっと東京にいる。姉妹は離島の生まれで、妹はいくつかの職業を目指して都市をわたりあるき、去年から東京に来た。妹はこの十年
![優秀と有能と勤勉のための税金 - 傘をひらいて、空を](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/06a15c64ba0ceec233d86d71001ebb29a9dcbf5d/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn.blog.st-hatena.com%2Fimages%2Ftheme%2Fog-image-1500.png)