宇野弘蔵『経済原論』 佐藤優(上) [掲載]2007年01月14日 ■2人のカール結んだ、純粋資本主義の視座 岩波全書版の宇野弘蔵著『経済原論』には人生の二度の重要な局面で助けられた。 一回目は、同志社大学神学部二回生のときである。キリスト教の洗礼は受けたが、マルクスから離れる気にはどうしてもなれなかった。人間が人間を抑圧したり搾取する資本主義社会よりも階級対立を廃絶し、平等を担保した社会主義社会の方がイエス・キリストの教えに近いと感じていたからだ。椎名麟三、ベルジャーエフなどマルクス主義からキリスト教に転向した作家の著作を次々読んだが、納得できる答えは見つからなかった。この問題に簡単に結論はでないと考えた私はとりあえずマルクス経済学とキリスト教神学を並行して勉強することにした。その過程でカール・バルトの『教会教義学』とカール・マルクスの『資本論』に惹(ひ)きつけられた。二人のカールが展開