追加経済対策15兆円の中身をよく見ると、「緊急対策」に4.9兆円で「成長戦略」に6.2兆円と、中長期の予算のほうが多い。これは「短期的なバラマキ」との批判を意識したものだろうが、その成長戦略の中身はといえば、太陽光システム、エコカー、介護、観光大国、コンテンツ産業など流行の話題を雑然と並べた、古めかしいターゲティング政策だ。これは官僚(特に経産省)が最近の経済学を知らないためだと思う。 日本経済にとって本質的な問題は一時的な需要の追加ではなく、持続可能な潜在GDP――Mankiwの言葉にならうと自然GDP――の水準をいかに高めるかである。これはマクロ経済学というより、成長理論のテーマだ。本書は、シュンペーターの創造的破壊の概念を中心にして最近の成長理論をまとめたもので、Acemogluに比べると質量ともに読みやすい。 経済成長の最大のエンジンがイノベーションだということについては、理論