本稿の最初で述べた通り、仮面はどこにでもありそうで、どこにでもあるわけではない。 太平洋諸島では、ポリネシア、ミクロネシアにはなくて、メラネシアのみ。アフリカでは、赤道を挟んだ熱帯雨林、ウッドランド、サバンナまで。おまけに、農耕中心の社会には見られても、牧畜中心の社会では見られなくなる。 こういう特殊性はどこから来るのだろう。また特殊性を持ちながら、仮面を持つ文化では共通するものが多いという不思議はどこから来るのだろう。 吉田さんはそれを「異界」というキーワードで語る。 「仮面というのは、異界、つまり自分たちの知識や力の届かない世界を目に見える形にする装置だと思います。チェワの場合はその異界が森なんですね。森からやってきた野生動物をかたどったニャウ・ヨレンバ、特にエランドをかたどったものが死者の霊を取り込んで森へ帰り、燃やされて、死者の霊を祖先の世界へ送り届ける。この場合は村が自分たちの世