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  • 『今昔物語集』巻第三十より、「色男の蹉跌」

    兵衛の佐(ひょうえのすけ)の平定文(たいらのさだふみ)、通称は平中という人がいた。上品で、容姿は美しく、立ち居振る舞いや言葉もあか抜けしていて、当時、この平中にまさる色男は世の中にいなかった。 そんな男だから、人、娘、いうまでもなく宮仕えする女性たち、だれ一人としてこの平中に言い寄られない者はいないというありさまであった。 同じころ、藤原時平という大臣の家には、侍従の君と呼ばれる若い女性が仕えていた。すばらしく美しいうえに、才気も申し分ない。 平中はこの大臣の家にしょっちゅう出入りしていたので、侍従の君のすばらしさを耳にして夢中になり、我が身にかえてもと思うほど恋着した。しかし、侍従の君は、たびたび送る手紙にまったく返事もくれない。 平中は嘆いて、『ただ<見た>という二文字だけでもいいですから、返事をください』と書き送ったところ、今度ばかりは、使いが返事をたずさえて戻った。喜びに取り乱し

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