カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー島の海岸に生息するキタノムラサキイガイ(Mytilus trossulus)は、2種類の伝染性がんに感染する可能性がある。(PHOTOGRAPH BY CHERYL-SAMANTHA OWEN) はるか昔、北半球のどこかで、ムール貝の仲間であるキタノムラサキイガイ(Mytilus trossulus)が、白血病に似たがんにかかった。たった一つの細胞の変異から始まったがんは、増殖を繰り返し、貝類の血液にあたる血リンパに乗って体中に広がった。 ここで意外なことが起こった。どういうわけか、がんが水を伝って他のキタノムラサキイガイに感染したのだ。新たな宿主の中でさらに増殖を繰り返したがん細胞は、次々と他の貝へ感染していった。 さらに不思議なことに、がんの広がりはキタノムラサキイガイにとどまらなかった。フランスなどに生息するヨーロッパイガイ(Mytil