「私にとって真実に近いものは、何かの真ん中にある――。」 真実が行方を眩ませ、私たちを惑わせるこの時代に、宇多田ヒカルははっきりとそう言う。 彼女にとって、音楽を創るとは「自分とは何かを知ろうとする」行為だ。一方、その行為が“ポップミュージックとして”鳴ることで、私たち多くのリスナーを、そしてアーティストたちをも刺激し続けている。2021年の視点をもって彼女の音楽を捉え直してみるとどのように聴こえてくるのだろうか――。ポップミュージックの最前線を更新し続ける、「今」の宇多田ヒカルに迫った。 ーー宇多田さんの音楽は常に時代とともにあると思います。2010年代以降、ラップミュージック的な音楽の作り方/聴き方がポップミュージックの主流となりました。宇多田さんのリリックの作り方やトラックへのボーカルの乗せ方は、どこかラップに近いアプローチも感じます。宇多田さんの楽曲制作の方法や音楽への向き合い方を