タグ

ブックマーク / 1000ya.isis.ne.jp (1)

  • 0424 夜 | 松岡正剛の千夜千冊

    ――よほど遠い過去のこと、秋から冬にかけての短い期間を、私は、変な家庭の一員としてすごした。そしてそのあひだに私はひとつの恋をしたやうである。 こうして『第七官界彷徨』は始まる。 私は小野町子。北向きの女中部屋に住み炊事を手伝いながら、奇妙な家の奇妙な人物たちの出来事を体験していくのだが、町子は第七官界をなんとか探し出して、これを詩にしてノートいっぱいに書きこみ、それを第七官界がわかるどこかの先生に書留小包で送りたいとおもっている。 ところが、この家庭というのが変なのである。だいたい一助、二助、三五郎、浩六、当八、九作という名の連中が入れ替わり立ち代わりするし、どうもそのうちの何人かは町子に懸想しているように見える。 外に向かっては何も勇気の出ない町子は、ひたすら心の中で変な気分ばかりを味わっていく。そういう町子の心の印画紙に映ったものを、尾崎翠は実に不思議な描写のあいだに入れていく。 た

    0424 夜 | 松岡正剛の千夜千冊
  • 1