第三回 全盲の井上さんだけが知っている色 ひとくちに「中途障害」と言っても、体のようすは人それぞれです。障害を得た年齢、得るまでについていた職業、持っていた関心などによって、記憶として知っている「健常者としての体」と、いま物理的に持っている「障害者の体」の力関係が変わってくるからです。当然、幼くして障害を得た人の場合は「障害者の体」が支配的です。一方、成人してから障害を得た人の場合には「健常者の体」として積み重ねた経験や知識の影響が大きくなります。 全盲の中途障害者に関して、そんな個人差がいちばんはっきり出るのは「色」について話すときです。色をどの程度、どのように感じているかは本当に人それぞれ違っていますし、そもそも色に対する関心の度合いも、細かく知りたがる人もいれば、自分には関係ないや、という感じの人もいる。色というテーマは、いわば「全盲中途障害の試金石」みたいなものなのです。 今