「マンガとアニメを軸に社会現象と化した本作は、メディア芸術分野の歴史にふさわしい厚みと現在性を兼ね備えている」。これは今年3月、文化庁が芸術選奨文部科学大臣新人賞に選んだ「鬼滅(きめつ)の刃」の作者・吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)に対する贈賞理由の一節である。 昨年、ブームを起こした同作の中身はさておき、ここで注目したいのは「マンガとアニメを軸に社会現象と化した」という説明だ。事実、単行本は破格の販売部数を達成、劇場版アニメに至っては国内の興行収入新記録を樹立し、メディアミックスの相乗効果を最大限に発揮する格好となった。 メディアミックスの成功事例は、国産初の連続テレビアニメ番組「鉄腕アトム」が1963年に放映開始して以来、日本では枚挙に暇がない。だが、「鬼滅」に象徴される近年のケースでは、従来と比べ二つの要素が際立つ。一つはスマートフォンの普及、もう一つはさまざまな面での消費者のボーダー