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2019年2月18日のブックマーク (5件)

  • 衿沢世衣子「制服ぬすまれた」 才気に舌を巻く、予想の斜め上の展開|好書好日

    『制服ぬすまれた』 [著]衿沢世衣子 夏休み、自主練で登校していた水泳部の女子高生がプールから戻ると、部室のロッカーから制服が消えていた。いじめか!? と思いきや、たまたま知り合った育休中の女性警察官の見解は外部の犯行。はたして真相は――という表題作はじめミステリー仕立ての5編を収めた短編集。 女性警察官が職業意識を超えた使命感で少女と関わった理由、それがあったからこその謎解き、終盤6ページの鮮やかさにはため息が出る。 年齢を偽りそば屋で働く地味顔女子中学生と失業中の青年との奇縁を描いた「ワニ蕎麦(そば)」と姉妹編「鉄とマヨ」、便利屋の青年とヤクザのバディ感にシビれる「カラスが鳴くから」、元ヤン美女の死体遺棄現場(?)を目撃してしまった大学生の推理が冴(さ)える「ハンドスピナーさとる」。いずれも伏線、予想の斜め上の展開、余韻を残すラストが見事で、ページのめくりと大ゴマの使い方も効果的だ。

    衿沢世衣子「制服ぬすまれた」 才気に舌を巻く、予想の斜め上の展開|好書好日
  • 現代社会と響き合う“倫理学” スピノザ「エチカ」|好書好日

    大澤真幸が読む 今『エチカ』の邦訳が売れている。哲学者の國分功一郎さんが、NHKの番組で、このを驚異的に分かりやすく紹介したことがきっかけらしい。ただ、そうした最大瞬間風速的な現象を超えて、スピノザは、20世紀終盤以降の最先端の知の流行である。ドゥルーズをはじめ重要な思想家がこぞってスピノザをもちあげた。この17世紀オランダの哲学者の思想が、現代社会が向かおうと欲しているものとどこかで響き合っているのだ。 『エチカ』は、死後に出版されたスピノザの主著。定理が順に証明されるという数学書のようなスタイルにまずは驚く。 内容の点では、このの肝はどこにあるのか。タイトルから連想されることの対極に、このの特徴がある。「エチカ」は倫理学という意味だが、スピノザは、倫理という語で普通にイメージされている威圧的な力を消し去ろうとしている。 このことは、スピノザが何を善/悪と見なしていたかによく現れて

    現代社会と響き合う“倫理学” スピノザ「エチカ」|好書好日
    inunohibi
    inunohibi 2019/02/18
  • 女装の叔父が今日から「ママ」に 与田基俟「あたらしい家族ができました。」|好書好日

    働きづめの父を亡くした女子高生の碧(あお)は、まだ見ぬ叔父の春軌と暮らすことに。しかし、女装で現れた彼の第一声は「今日から私があなたのママよ♡」だった!? 作は、そんな2人の共同生活をテンポよく描いたコメディだ。 同じ卓についてべる朝、手作りのお弁当――。 父を気遣い自分の気持ちを抑えこんできた碧にとって、その時間がどれだけ沁(し)みるものなのかが描かれてゆく。突如、目の前に開かれた免疫のない世界。それでも人の優しさを素直に受け止め、思うことを口にしようと一歩を踏み出す碧が眩(まぶ)しい。 騒々しくも温かく寄り添う周囲の人々も個性的。春軌がママを務めるバーの面々に同級生の男前な双子ガール。自分の“好き”をまっすぐに表現できる彼らの存在は、碧にとって新たな道しるべだ。 しかし、なんといっても大きいのは春軌の存在。「個」を重んじる父性と「場」を大切にする母性がぶつかると、さまざまな局面

    女装の叔父が今日から「ママ」に 与田基俟「あたらしい家族ができました。」|好書好日
  • 近くにいると緊張が解ける人、温かく 高松美咲「スキップとローファー」|好書好日

    私大入試真っ盛りである。ことさら短い2月の空気には、芽吹きや新生活に向かって全てが弾(はじ)けだす直前の胎動のようなものを感じる。そんな折に読みたいのが作だ。 過疎化した海辺の町に住む岩倉美津未。首席で東京の高校に進学した彼女にはカンペキな人生設計がある。しかし、思いとは裏腹に、入学式当日に悪目立ちしてしまう。 とはいえ作は、上京したばかりの女子高生が急激な環境の変化からナイーブになってしまう話ではない。自分を繕いがちなミカに、過去を隠したいイケメンの志摩、堅物の誠。そんなクラスメイトに対し、周りに合わせて己の発言を矯正しようとする様子のない美津未を包む空気はいい意味で弛緩(しかん)している。近くに居ると緊張が解けて一息つけるからか、周囲もゆるやかに感化されてゆく。そして、恋というものがよくわかっていない美津未にもまた、今まで味わったことのない感情が芽生え始める。 著者は新しい人間関係

    近くにいると緊張が解ける人、温かく 高松美咲「スキップとローファー」|好書好日
    inunohibi
    inunohibi 2019/02/18
    #コミック・セレクト
  • 「ファクトフルネス」 「事実に基づく世界の見方」を示す|好書好日

    冒頭、世界に関する13の質問が登場する。「現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?」。20%、40%、60%の3択から評者は20%を選んだ。正解は60%。公衆衛生学の研究者である著者らが行った調査では正解率は7%だった。他の質問も正解率は低い。 勘違いするのは、悲観的に見ようとする「ドラマチックすぎる世界の見方」が人間の「能」として脳に組み込まれているからだという。 その能を、「世界は分断されている」と思い込む「分断能」、「世界はどんどん悪くなっている」と思い込む「ネガティブ能」等々に類型化。勘違いを排し、正しく判断するよう、「事実に基づく世界の見方」、ファクトフルネスを習慣づける方法を示す。 例えば、低所得国に住むのは世界の人口の9%で、75%は中所得国に住むという事実は、既存の世界観の書き換えを余儀なくさせる。 メディアの責任も問う。「あなたに気づいても

    「ファクトフルネス」 「事実に基づく世界の見方」を示す|好書好日