小熊英二【第1回】「人間は不完全な存在だから、人間の考える理論で世界を覆うことは無理だと思う」 探究し、社会に適合させる「学者」という仕事 慎: 小熊先生の本は10年以上前から読んでいて、いつか是非お話をうかがえたらと思っていました。「アジア・イノベーション・フォーラム2013」のときに機会をいただいて今日お会いすることができました。 最初は『単一民族神話の起源――〈日本人〉の自画像の系譜』という本を読んで、学生の頃に『〈民主〉と〈愛国〉――戦後日本のナショナリズムと公共性』を読ませていただきました。今日はいろいろと本のことなども併せてお伺いしたいのですが、まず小熊先生は自分のお仕事は何だと思われていますか? 小熊: 一番目は研究をすることで、二番目は教育でしょう。三番目はちょっと二番目と区別がつけ難いところですが、文章を書いたり、あるいは教育外のところで喋ったりすることですね。これは、何