他人にはないことか知らん。――私には、あんまり其があつて、あり過ぎて困つた癖だと、始中終それを気にして来た。聞いては見ぬが、大勢の中には、きつと同じ習慣を持つて居ながら、よく/\の場合の外、其に出くはさずじまひになる人が、可なりの人数はあるはずだと思ふ。 歩き睡りと言ふ、あれである。気をつけて居ると、大通りなどでも、どうかすると、ずつと道ばたに寄つて、こくり/\と頭をふらつかし乍ら行く子どもなどを見かけぬ訣でもない。 実は大分久しく、その習慣に遠のいて居た私だが、をとゝしの末に幾年ぶりかに行きあうて、其から暫らく、此が続いたので、どうも全く夜道などは、弱つてしまつたことだつた。 こんな歌を作つて、慰むともなく、苦しむともなく暮して居たのは、其年の暮れのことである。私などは今度の大戦争にすら、何の寄与することの出来ぬ、実に無能力な、国民の面よごしとも言ふべき生活より外に出来ぬ人間である。そん