人はなぜ映画を見るのか。そこに映し出されている自分の片割れと出会うためである。その片割れは、ときとして人ならざる姿をとって我々の前にあらわれることがある。 映画『君の名は。』(2016年)が分裂して隕石と化した彗星核の主観ショット(見た目のショット)で幕を開けている点を見逃してはならない。この映画で問われているのは、立花瀧や宮水三葉といった表向きの主要人物たちの名前だけではなく、彼らの日常に狂奔と奇跡をもたらし物語を駆動することになるティアマト彗星の名なのである。『君の名は。』とは、スケールを違える人間と非-人間的存在が相互に連関しながら豊かに紡ぎ上げる壮麗なテクスチュア(織物)の謂である。 本作は、何よりもまず恋する彗星の物語である。そう断言するところから話をはじめよう。何しろそれは1200年かけて自らの片割れに会いにやってくるのだ。この彗星の振る舞いが時間のズレを乗り越えて劇的な出会い
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