「一行残れば勝ち」 斎藤 セレクションからして大変なお仕事でしたね。 渡部 選ぶだけでたっぷり半年以上かかりました。この本では、原典から抜いた惹句的な一行と僕の解題を読んでもらえれば、日本近代批評の主立ったところがわかるし、その惹句を付けた目次(後掲)だけでも、おおよそがわかると思います。 斎藤 私、これ買いだと思います。だって重要な批評ばっかりこんなに集めた本って、これまでにないですよね。 渡部 批評のアンソロジーは、『昭和批評体系』五巻本(番町書房)などが昔はあったし、いまも、岩波文庫に『日本近代文学評論』の二巻本がありますが、秋成・宣長から蓮實・柄谷まで七十本、ひとりの編著者が作った本はこれが最初だと思います。 斎藤 いまでは個人全集をひっくり返さないと読めない文章も多い。文庫の回転はこの頃えらく速いけど、真っ先に消されるのが文芸批評です(笑)。名前は知ってるけど、読んでないものも多