■整理できぬ情熱の集約 前回の本欄で「若者たちはウェブ上でオープンに協力して事を成す新しい能力を持っている」と述べた。それからわずか1カ月。私の身に本当に起きた驚くべき出来事について記してみたい。 4月25日に新著「シリコンバレーから将棋を観る-羽生善治と現代」(中央公論新社)を上梓(じょうし)したのだが、それと同時に私は、出版社と相談の上、ブログ上で「この本は誰が何語に翻訳してウェブ上にアップするのも自由」と宣言した。この本は、将棋という日本文化や棋士というすてきな日本人たちの存在に一人でも多くの人が目を向けてほしい、という純粋な思いから書いたもの。もしこれが日本語以外の言葉に翻訳されて世界中の人々に読まれれば楽しいではないか。始まりはそんなふとした思いつきにすぎず、何かが本当に起こることを、私は予想などしていなかったのだ。 しかし刊行から4日後の4月29日、東京の21歳の大学生が、この