ソレイマニ司令官殺害事件についていくつか文章を書いているうちに、憲政史家・倉山満氏のことが気になってきた。人気著述家である倉山氏のことは、私も気にしている。倉山氏の最新刊『ウェストファリア条約』は公刊後すぐ、昨年のうちに読んでいた。 倉山氏は、憲法と国際法に関して、私とは真逆の立場をとる方である。倉山氏は、アメリカが起草した現行憲法を無効と考える一方、明治憲法を高く評価する。興味深いのは、倉山氏が、国際法についても似た立場をとることだ。現代国際法を評価せず、古典的な国際法を評価する。 倉山氏の『ウェストファリア体制』は、グロティウスを天才と呼び、1648年ウェウストファリア条約以降の国際法体制の素晴らしさを訴える本だ。なぜかと言えば、ウェストファリアによって、「殺し合い」が横行していた30年戦争が終わり、暴力を独占する主権国家による「戦争」だけに暴力が整理されたからだ。 学術的に細かい議論