豊﨑由美「全国3000人の海外文学ファンを代表して トヨザキ社長が提案!“ガイブン仲間"を増やすには?」 ―2009.03.13 初めて、絵本以外の本を読んだのは五歳くらいの頃。九つ年の離れた姉が持っていたグリム童話全集だったんですの。版元がどこかはわからないのですが、幾度も読み返したためにすり切れてしまった黄土色の布カバーは、今でもはっきりと思い出すことができます。とりわけ好きだったのが、「こわがることを習いに出かけた男の話」という一篇。 これは、賢い兄と比べると愚鈍な弟が、ぞっとすることを習いに旅に出るお話です。賢兄愚弟の物語は世界に無数にあるのですが、"きれいは汚い、汚いはきれい"という価値の反転がよく起こるグリム童話における愚弟の人生逆転劇は、姉と比べて出来がよくなかったわたしにとって痛快でした。 一般的な常識のもとでは役立たずだった青年が、ぞっとする感覚がわからないというバカバ