HOME 書評的省察:井上達夫のリベラリズムと向き合う 2003/12/18 橋本努 (以下のエッセイは、2003年12月13日の東京法哲学研究会における私のレジュメに加筆・修正したものです。当日の内容は、井上達夫氏の近著をめぐる合評会であり、コメンテイターは亀本洋氏と私でした。) 0.はじめに 現代の社会哲学・社会思想を語る上で、おそらく井上達夫ほど重要な思想家はいないであろう。リベラリズムの刷新によって、コミュニタリアニズムや熟議民主主義などの諸思想を自らの体系に取りこむというその独創的な思想は、いまや現代社会における「普遍」として君臨するイデオロギーであるかのようにみえる。この思想はしかし、どこにその首頚骨をもつのだろうか。この思想によって包摂されない別の可能性は、どこにあるのだろうか。 以下では、井上達夫著『普遍の再生』および『現代の貧困』において詳述された井上流リベラリズムの思想