企業が東京を出る動きが広がり始めている。帝国データバンクによると、2021年1~9月に都外に本社所在地を移転した法人数は4142社と、前年を1割上回った。新型コロナウイルスは働き方だけでなく、企業のあり方そのものも変えつつある。「新天地」を求める人たちは何を考え、何を求めるのか。東京から地方に本拠を移した企業の社員らの姿を追い、その答えを探った。 ビニールハウスに並ぶキノコ 多様な景観や独自の文化で知られる能登半島。その最北端にある石川県珠洲(すず)市は、市として本州で最も人口が少ない。全国でも人口の少なさで10番以内に入る典型的な過疎地域だ。医療品原料などを扱う東証1部上場のアステナホールディングス(HD)は6月、東京の日本橋から本社機能の一部を移した。 現地を訪れると、同社の企画総務部で働く冨田遼太朗が、市から借りているビニールハウスを開けた。中には切り株からニョロリと生えたキノコが並