本章ではRSA暗号に関する研究を行う人を対象に,より深い内容について説明します。 そのため,単に公開鍵暗号やRSA暗号の概要を知りたいだけの人は読む必要はありません。 RSA暗号によって暗号化や復号化などの処理を行う際に,もし全く工夫のない計算手 順を取れば,それは膨大な計算量となるでしょう。例えば,111^37 mod 323を計算するこ とを考えます。単純な方法では,111に自分自身を36回掛けて(非常に大きな値になる), それを323で割った余りを求めることになります。 この程度であればコンピュータを用いれば簡単に計算できますが, もしここで用いた数を100桁以上に増やした場合はどうでしょうか。 実際RSA暗号が安全であるためには,数は150桁は必要です。この方法を用いて150桁の 数を150桁の数でべき乗するとなると,どんなコンピュータを用いても人間の寿命よりも はるかに長い時間を