<「とうとうそのときが来ましたか」> 毎年、終戦記念日になると思い出すのが、シベリアに抑留された経験をもつYさんの最期でした。 Yさんとの最初の出会いは、平成7年の晩秋でした。軽い腹部の不快感と全身のだるさを訴えて、診療所の外来を受診されました。 よく診ると、眼球の白い部分が少し黄色っぽくみえます。黄疸(体内に胆汁がたまり皮膚が黄色くなる状態)を疑い、腹部エコーをしたところ、膵臓癌でした。 放置すると黄疸が悪化して大変なことになりますので、入院治療が必要です。 すぐにも入院が必要だったため、その場でYさんご本人に告知しました。すると、Yさんは不思議なくらいサバサバした表情で「とうとうそのときが来ましたか」と言われたのが印象的でした。このときの私には、その意味がわかりませんでした。 <シベリアでの抑留体験> それにしても膵臓癌というのは、なかなかやっかいな病気です。進行するまで症状が出にくく