スピルバーグは「ジュラシック・パーク」を映画化したとき、原作の八割をどぶに捨てた。 ぼくはマイケル・クライトンが好きだ。「仏作って魂入れず」などとSFファンの多くから非難されるクライトン師匠であるし、ぼくも「まあ、その通り」とクライトン作品が好きであるにも関わらずそのことは認めざるを得ない。しかしあまり頭がよろしくないぼくにとって、googleがなかった時代、クライトンの作品は「知らなかった世界」に扉を開いてくれる啓蒙の書だった。世の中にはこんな新しい発見がある!世の中にはこんなに面白いことがある!それをフィクションの形をとって面白く物語ってくれるのがクライトンという人だった。 「琥珀に閉じ込められた古代の蚊が吸い込んでいた血液のDNAから恐竜をクローン再生する」 いかにもっともらしい嘘をつくか、という命題をエンタメ要素とするSFにおいて、こいつはワクワクするようなアイデアだった。思えばこ