山田奨治『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』人文書院、2011. 近年の著作権改正(改悪?)の動向を伝え、批判する内容。若手ジャーナリストのような書きぶりだが、著者は『〈海賊版〉の思想』(みすず書房, 2007)など数点の著書を持つれっきとした学者である。索引の付されたハードカバーの書籍であるが、手に取りやすい新書などの形態で出版したほうが、著者の狙いに沿ったものになったかもしれない。 内容は次の三つである。第一に、権利保護の強化と厳罰化という現在の趨勢の解説である。利用者が著作物にアクセスできないのみならず、著作財産権の保有者との対立で著作者まで著作物を十分管理できないような状況になっているらしい。第二に、最近の著作権法の改正をめぐる文化庁の審議会およびその下の小委員会の議事録の分析である。消費者を代弁する立場の委員が少なく、保護の強化を狙う権利者側の意見が通りやすい状況が見てとれる