「こぼれたのかな……内緒ね」。そう言う真紀(松たか子)と鏡越しに視線が交差した瞬間、目を見開いたのはすずめ(満島ひかり)だけではなかったはず。ドラマ『カルテット』は、全てがグレーのまま幕を閉じた。あぁ、なんて行間案件のドラマだったのだろう。 グレーのままでいい、という愛情 疑惑の人となった真紀が、コンサートで演奏しようと選んだ楽曲は『死と乙女』だった。第9話で、真紀にすずめが話した「好きはこぼれる」という言葉をふまえるのなら、こぼれたのは「この曲が好き」という意味かもしれない。だが、義理父の「死」が近くにある真紀は、その選曲に意味があるのではないかと勘ぐられてしまうだろう。 でも、すずめにとって真相はグレーのままでかまわなかった。白黒つけたがるときは、往々にして相手を糾弾したいときだ。味方でいる分には、白でも黒でもそばにいることには変わらない。内緒にしたい秘密があっても「信じてほしい」と言