しゃれたイラストで難解な文学が分かりやすく表現されたコミック『失われた時を求めて』。マドレーヌの味から過去を回想する有名なシーン(C)1998 Guy Delcourt Productions−Heuet,Based on the novel by Marcel Proust こうした状況を一変させたのが、98年にフランスで発売されたコミック版だ。アート・ディレクター、ステファヌ・ウエさんが絵と翻案を手がけ、フランスの漫画出版社・デルクール社から刊行された。 「古典の冒涜(ぼうとく)」と批判される一方、徹底した時代考証によるイラストと原典の世界観を壊さない編集が「新解釈」と評価された。中条教授は「物語を視覚化させたことで、骨格が浮かび上がった。プルーストに近づく最適なガイドブック」と話す。 日本語版は、第1編第1部をオールカラー80ページで出版。初版5000部は予約完売状態で重版を検討中。