長沢明は「比較的若い世代のことが気になります」といった。現代美術としての日本画の最前線を突っ走ってきたトップランナーは、若い世代に対して、壁となってそそり立つことを目指す。にゅーと存在する新しいトラは、伝統を踏まえたニュートラディショナルであり、ニュートラルの状態でもある。旧習と妥協しないしなやかな行き方が、表現者の真骨頂である。独自の厚いマチエールと、時代や他者との独自の距離のはかり方が長沢流の美学だ。 ●繊細にして重厚なマチエールですね。 長沢:土と石膏で下地をつくります。壁画のような、あるいは野晒しにされたイメージを立ち上がらせたくて、下地作りには手間と時間をかけます。 ●というと? 長沢:パネルのボードにいちど寒冷紗をはりこんで、そこに自家製の絵の具を食いこませる。ガーゼみたいな寒冷紗のあらい織り目のなかに絵の具が入りこんで、基底材がより堅牢になります。 ●寒冷紗の布目の風合いをそ