今回は、近年の我が国の教育現場にみられる英語コミュニケーション(のみの)重視傾向に関して批判的報告を行う。 1996年7月19日に提出された第15期中央教育審議会答申では「国際化と教育」に関して提言が行われ、学生の留学・教員の海外研修・外国語指導助手の招致・留学生の活用等が具体策として提案されるなど、近年の我が国では、教育現場への英語コミュニケーションの導入が盛んに取りあげられている。 しかし、1976年にドーアが『学歴社会・新しい文明病』(Ronald P. Dore "THE DIPLOMA DISEASE" 1976)で取り上げているところでは、スリランカ・ケニア等では旧宗主国の言語が学校指導において多用されていたにも関わらず、教育的効果をあげることはできなかった。ドーアはこの分析において、仮説として後発諸国が先進国の情報を単純に模倣することを採点の基準とする“学歴中心主義”に陥