(ジャーナリスト・近藤大介) 1935年10月、「長征」の途中で六盤山(現在の寧夏回族自治区にある海抜3500mの高山)を通った際、疲弊した共産党軍に毛沢東が発破をかけた。「万里の長城に到達しなければ立派な男ではない!」(不到長城非好漢)。毛沢東が北京の天安門の楼上に立ち、中華人民共和国の建国を宣言したのは、それから14年後のことだった。 新中国の建国以来、幾多の中国青年たちが、「我も万里の長城に立つ男にならん」と夢見てきた。特に、毛沢東と同じ湖南省出身者に、その傾向が強い。 毛沢東が建国を宣言してから69年後の2018年11月26日、やはり湖南省出身の34歳の青年物理学者・賀建奎(Hu Jiankui)が、「万里の長城に到達した」。人類史上初めて、人工的にゲノムを編集して、2人の女児を誕生させたのである。たちまち世界中に、このニュースが伝わり、「人類はついに禁断の第一線を越えた」などと報