目の前にボタンが3つあるとして、それぞれが三ヶ月前に戻るボタン、三年前に戻るボタン、三十年前に戻るボタンだったならば、僕は果たしてどのボタンを押し下げるのだろうかと、考えていた。 三年前、というのは非常に現実的な過ぎ去った日だ。あの頃の僕は、まだ、人間になりたいという、今では失われてしまった葛藤を抱えていた。そんなくだらない葛藤が、何かの役に立つというわけではないし、たとえば三年前に戻ってみたところで、また同じように僕はその葛藤を時間と共に失うだろう。けれども、もしも三年前に戻れるならば、僕はその、人間になりたいという葛藤を、再び手にする事が出来る。それは、どのボタンをも押し下げない事と比較すれば天と地の、十分な事のように思える。 三十年前、というのは、非常に現実的な数字だ。三十年あれば、僕は真性引き篭りhankakueisuuである事を避けられるばかりか、僕という人間そのものすらをも綺麗