父親から息子へのメッセージと言えば、毛利元就の「3本の矢」に代表されるように、人生の教訓を語るものが多い。企業のトップが経営を譲るとき、政治家が地盤を譲るとき、あるいはスポーツ選手が指導者になったときのように、自らの経験に基づいた、人生を歩む術を伝授するのが常だろう。 とはいえ、こうした功成り名を遂げた人物や、哲学者、宗教家などの人生は、一般人にとっては、簡単にまねできないし、書物になった人生論を読み進めるうちに、自慢話を聞かされている気分になることも少なくない。 本書の著者である勢古氏は、タイトルにもあるように普通のサラリーマンOBだ。明治大学を卒業し、洋書の輸入販売を手掛ける小さな会社に34年間勤め、昨年退職した。1947年生まれとあるから、二人の息子も、すでにいい大人になっているのだろうと思う。 自分の来し方を「父として子供に見せられるような背中はなかった」と振り返るものの、誰にでも