東日本大震災の被災地で、地域新聞が存在感を増している。3月11日の震災による停電や輪転機の浸水といった緊急事態の中、手書きの壁新聞やパソコンで製作したコピー新聞を発行し、避難所に的確な情報を届けた。その後も、「地域密着」の特性を生かした生活情報で、被災住民の復旧・復興を支援し続けている。【青島顕】 ◇「ペンと紙があれば…」手書きの壁新聞 宮城県石巻市の地域夕刊紙「石巻日日(ひび)新聞」(発行地域=同市、東松島市、女川町。震災前のページ数・部数=8ページ、1万4000部)は、大震災当日の被害は輪転機1台が浸水しただけだった。しかし、夜になっても停電や断水が続いた。また、6人の記者のうち3人と連絡がつかず、翌夕の発行が危ぶまれた。 1912年創刊で、来年100周年を迎える伝統紙。その日の夜、ろうそくの明かりの中で、幹部たちは話し合った。報道部長の武内宏之常務(53)は、先輩たちから聞かされた社