私を生んで、ありがとう これは、エストニア出身の大関・把瑠都が初優勝のインタビューで、国技館まで駆けつけた母親に捧げた言葉である。この台詞は、母親への感謝を表す感動的なものではあるが、何だか違和感がある。あなたが日本人なら、日本語を母語として操るなら、違和感の正体は明らかだろう。そう、こういうとき私たちは、「生んでくれて、ありがとう」と言うのだ。実際に、このインタビューを伝える記事では、「私を産んでくれてありがとう」に発言が修正されている。 (インタビュー動画はこちら。3分辺りにこの発言がある) 外国籍の力士は驚くほど流暢な日本語を操るが、それでも外国語として日本語を習得した彼らには理解できない、理解が難しい日本語が存在する。本書は、外国人に日本語を教える過程で著者が感じた日本語の特徴、日本人もよく理解していない日本語の文法について、過去の文法研究の系譜を踏まえてまとめられた本である。 7