2009年01月17日21:00 カテゴリ近代文学村上春樹 村上春樹「国境の南、太陽の西」再読 村上春樹の「国境の南、太陽の西」を14年ぶりに読み返した。前回の読後感の記憶はない。最近、この作品の一部分を読むちょっとした機会があって、その時に非常に心惹かれるものがあった。私は村上春樹の良い読者ではない。最近の作品も読んでいないし、その活動についても詳しくは知らない。また、近年多く出ているこの作者についての評論の類もあまり読んだことがない。だから、今から述べるのは全くの個人的な、言わば「断片的読書感想」である。 主人公の「始(はじめ)」は自分が一人っ子だということに幼い頃から欠損感を抱いている。村上春樹の文学の主題は「喪失感」だと竹田青嗣などによって言われるが、この作品でもそのテーマは色濃い。彼は生まれついて「欠けている」人間である。実質的には欠けていないではないか、という考え方もある。それ