タグ

ブックマーク / www.silverboy.com (3)

  • 国境の南、太陽の西

    国境の南、太陽の西 「ダンス・ダンス・ダンス」によって初期作品の系譜に一応の区切りをつけた村上春樹が新たな小説世界に踏み出した作品。「羊」から「ダンス」までの4作がいずれも上下2巻の大作であったのに比べれば短く感じられるが、この作品も500枚を超す長編である。 「ノルウェイの森」のことを「恋愛小説」だと思った人たちにとってはこの作品は間違いなく「不倫小説」だろう。ジャズ・バーを経営する「僕」の前にかつて幼い思いを寄せた女性が現れて、という筋立てはそれ自体として読めば紛れもなく、中年の男が結婚生活と愛人との間で苦しむ道ならぬ恋の物語だからだ。だが、「森」が「恋愛小説」でなかったように、これもまた「不倫小説」ではない。あるいは「ただの不倫小説」ではないというべきか。 「僕」にとって運命的な女性である「島さん」についての描写は物語の最初の20ページほど、「僕」が中学に入ったところで終わってしま

  • 羊をめぐる冒険

    羊をめぐる冒険 「風の歌を聴け」、「1973年のピンボール」がともに300枚程度の中編であったのに比べると、800枚以上とボリューム的にも「初長編」と呼ぶにふさわしい力作であり、実際にも村上春樹の出世作となった作品である。登場人物は「風」、「ピンボール」と同じ「僕」を中心に、美しい耳を持った彼女、別れた(「ピンボール」で翻訳事務所の事務をしていた女の子)、ジェイ、「鼠」、翻訳事務所を共同経営する友人、右翼の大物の秘書、運転手、いるかホテルの支配人、羊博士、そして羊男など。 前作で示唆されていた「物語」への傾きはここで一気に加速し、「羊をめぐる冒険」というタイトルにふさわしい叙事詩が展開される。「僕」は些細なことから背中に星形の斑紋を持った羊を探す羽目になり、彼女とともに北海道へ渡ることになるのだ。「僕」と彼女はいるかホテルで羊博士に出会い、示唆を得て「鼠」のいる山の上の牧場へ向かう。「僕

  • 1973年のピンボール

    1973年のピンボール 「風の歌を聴け」に続く第2作。舞台は「風…」から3年後の1973年、「僕」は大学を卒業し友人と小さな翻訳事務所を営んでいる。前作から続いて出てくるのは「僕」の他に「鼠」、そしてジェイと彼のバー。その他の主な登場人物は、双子、翻訳事務所の庶務を取り仕切る女の子、「鼠」と束の間つきあう「女」、直子、そして、「スペースシップ」という名の3フリッパーのピンボールマシン。 前作が「僕」の夏休みの一コマを淡々と切り取って見せたのに比べて、作では「物語」への傾斜が強まっている。双子と暮らす「僕」の心をある日ピンボールマシンが捉える。「僕」がかつて(「風の歌を聴け」に描かれた70年の冬のことだ)虜になったスペースシップを探して再会を果たすことがこの作品の骨格になっている。 だが、作品にピンボールが登場するのは紙数も半分を過ぎてからだ。そこに至るまでは、僕とある日転がりこんできた双

  • 1